最初に記録写真を撮りはじめたのは、もやい「こもれび荘」の頃のことだった。
今でも覚えているのは
最初に声をかけてくれたSさんを撮影させてもらったこと。
絵を描く人で、指を使って絵の具で描かれたその絵は
独特の風合いと色使いで、本人のキャラクターとあいまって強烈な印象を残した。
後年、山谷周辺での活動に参加をしたときに
亡くなったその人のことを話したら
皆が一斉に「あぁ Sさん新しい人がくると話してたよね」と知っていた。
最後に携帯が鳴ったのは、入院先からだったと後で知り
その後すぐに亡くなってしまった。
携帯には消せない記憶と共に番号が残っている。
そうした昔の記録を
記憶の断片として尋ねられる人が最近重なった。
フィルムを巻き上げていた頃のものを引っ張り出すと
そこには亡くなった人も含めて
一期一会の
本当に一瞬の「場」の形成だったと感じる。
そしてまた出来事と共に
一つの声として伝わっていく1枚もある。
いつか絵に描こうと思って、資料として残すものも
写された人への贈り物の一つになるかもしれない。
写真:NPO法人自立生活サポートセンター・もやい こもれび荘にて2015年撮影