夏の間に描いたモノ

こしらえたモノが溜まっていたので、久しぶりに整理してみたら

夏が終わっていた。

 

今年は海にゆかぬ。

毎年、海にぽかんと浮いて空を見る瞬間を作っていたのに何ということだ。

 

そして、思い出の沢山つまった豊島園も夢のように消えてしまった。

 

この夏は何だっただろうか。

ずっと走り続けている気がするのに

完全なる運動不足が続いている。

 

一つだけ嬉しいことがあった。

漫画を描いた後、夜回りで

テント越しであったけれど

漫画のモデルになってくれたおじさんへ「これ出来ました」と手渡せたことだ。

 

暗闇の中。蒸し暑い夜であった。

雷鳴がとどろき、まだいつも回る道のりの半分が残っていた。

いつ落雷するのか雨が降り出すのか分からない塩梅だった。

 

その人のテントに人の気配はなかったが

「こんばんはー。前に話していたもの出来ました」と声をかけると

しばらくしてわずかにブルーシートの中で動く気配がした。

 

嬉しくなって「わっあのときはありがとうございました!」と言ったら

闇に吸い込まれるようにして漫画がテントの中に消え

「おぉっ?おぉおおっ?」っと声がした。

 

そして、それきり元のようにシーンとする。

 

またいつか

貴方がその中を出ている時に会えるのであれば

感想なども聞いてみたいと思うのでした。

 

おじさんのテントも今頃には

秋の虫の声に包まれていることでしょう。

 

暑さにも、コロナにも負けず

勝たなくても

何にも負けず

生きてまいりましょう。

 

*挿絵「月を仰いで 第5歩」のための挿絵