舞台の幕間

わたしの視界を舞台とするならば

次々に立ち現れては

舞台の裾に立ち去っていく

1人ひとりは

やっぱり主人公で

パフォーマーだ。

 

一緒に作業などして

すでに1時間も経とうとしているのに

突然

「やまざきさん!おはようございます!」と丁寧に挨拶する。

真面目で繊細に過ぎるそのまっすぐな縫い目

その人は別段ふざけているのでもなく

ただまだ朝の挨拶をしていなかったことに気づいたから

挨拶をしただけのことなのだった。

 

そして私も

「みなさん。おはようございます」などと立ち上がって一緒に挨拶をしてみる。

 

時折はふらりふらりと部屋にやってきて

「もう死にたい…」と泣きながらやってくる人もいて

もう作業などやっている場合ではないので

部屋の中の人たちに「任せた!」と言い残して廊下に出ると

しゃがんで泣いている。

 

わたしとそれほど年齢も変らない人なのだが

辛さも苦しさも

年齢に比例して軽減されるわけでもないのだった。

 

「そうですか

 今は作業中なので下に行ってそれを伝えてください」と

およそ普通なら変なやりとりをして

それでもその人の透明なほどの純粋さ素直さは

「はいそうしますーー」と返事をよこしたりする。

 

そして

少しの休憩時間になると

椅子を自分の好きな位置に据え

風に吹かれてまっすぐ空を見つめている人がいて

窓に向かうその横顔は

何か神々しい感じもするのだった。

あれが真実”休憩”というものだろうと思っている。

 

わたしもその人たちの視界という舞台の中に

時々経ち現れてはいろいろしでかしているわけだ。

 

間の抜けたことをしでかすと

間髪いれずに

「妖精のせいだから。大丈夫です」と

声をかけてくれたりする。

 

なのでわたしも安心して

ちくちく一緒にやっていけるのだった。

 

*スケッチ途中「森の読書会」