母と連れ立って海辺を散歩する。
雲は重たく
風は冷たかった。
ムコウの方では雲の切れ間から
時どき陽も射すので
そのうちきっと晴れると待ちながら
遠い昔に
よく海で遊んだ日のことなど
風の中で語った今日だった。
いつかまたこの先
この海辺の散歩も
一つの記憶として
思い返す日もあるのだろうと
なんだか頼りないよな気持ちで
砂の上を歩いた。
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「わたくしのこんなさびしい考は
みんなよるのためにできるのだ
夜があけて海岸へかかるなら
そして波がきらきら光るなら
なにもかもみんないいかもしれない」
*宮澤賢治「青森挽歌」より