声をひそめて話しかけられると
何故かこちらも声を低くしてしまう。
それは秘密の何かを打ち明けられる合図であり
これから話すことの重要性を計る一つの目安でもある。
「気づいたんです。
ベランダに投げられていました。
これが」
という指先を見ると
それは小さなプラスチック片で
今にも風に吹かれて飛んでいってしまいそうなモノなのだが
「今朝、捨てたのに
またここに
同じ場所に投げられていました」
その顔を見返すと
とてもふざけているようには見えない。
例えそのプラスチックの断片が
偶然そこに落ちていたにしろ
その人にとっては何かの信号で
いまや安穏としている場合ではないということだ。
以前読んだ本には
居ないはずの屋根裏の住人が
毎日自分の部屋へ勝手に贈り物を置いていくという
奇妙な考えにとらわれた人のお話が書かれていた。
わたしの部屋などは物が多すぎて
誰かが実施に何かを置いていっても
気づかないくらいな感じで
とても残念な感じだ。
*イラスト「舞台裏」