ノートの切れ端

今年の暑さで花弁の開き具合も普段と違うらしい。

茎が揺れるごとに花弁がこぼれる。

こぼれた花弁をノートの切れ端に挟んだものを見舞いに持っていった。

 

「他の患者さんに悪いから」と

ハーブの香りさえも周囲の人を気にしていた女は

小さなこの包みなら迷惑もかけないと安心したように受け取った。

 

彼女の目の前には

 

やっと喉を流れるようになった栄養補助ゼリーが半分残っている袋が置いてあった。

 

病室の窓はベッドから少し距離があるから

彼女が見つめるのは空ばかり。

(雲の行き来もみているのか)

 

 

 

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明日は投票日だ。

1枚の白い紙は

わたしの背後に連なるこの紙切れを持たないあらゆる人々の暮らしにも直結し

わたし自身にもあらゆる形でもどってくる。

 

花弁よたやすくこぼれるな実を結べ

 

 

*メガネさん着色@断片スケッチ