九ツ谺

 

 

ある日突然

目的地とは違う電車に飛び乗り

そのまま知らない土地まで乗り継いでいく。

誰でもない

世の中から不要になっていく

その不思議な安心と自由と狭間の瞬間を

つげ義春が何か書いていた。

 

失踪するのも

無気力ではなかなかできないことだ。

 

 

わたしの人格形成に影響を与えた人たちは

アタリ前だけれども

 

血のつながった人だけではない。

 

 

 

多感な時期

相手に理解してほしい、理解されたいと体当たりして

結果としては

とことんまで傷つけあった相手もいる。

 

それはもう

円滑なコミュニケーションだとか

ルールもくそもなく

距離をはかるも何もない

ただがむしゃらだった頃。

 

 

行方がわからないののだと

古い友人から知らせがあったのは昨日だった。

 

ただし何か書き置いたモノがあるでなく

音信があったわけでもなく

本人の意思なのか

何かに巻き込まれたのかは

誰も知れない。

 

普通に朝

仕事に出かけ

そのまま帰らない。

 

躑躅が咲いている。

竜潭譚を思い出す。

 

いつかぼんやりとでもいいから

生きて戻ってこい。

祈る。