小説家になった猫/吟醸掌篇 Vol.1

「猫の小説家でお願いします」

伝えられたイメージには

写真が添えられていた。

 

頬杖をつく芥川龍之介

憮然とかまえる安吾

漱石の写真だった。

 

 

小説家と呼ばれる人に会ったのは

それが初めてだった。

 

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フリーで仕事をしていると

雑に扱われることも多くあって

作品を納品しても

ギャラの回収まで自分ひとりでやらねばならず

中には

「企画が無くなったから」の一言で

そのままになってしまうこともあった。

 

だが彼女は違った。

 

むしろ

「いや、まだ早いです。そんなやめてください」と

(ギャラ支払いの件で)私の方が制止する場面などもあり

最終校正においては

連絡を入れた直後には

すでに振込みがされているという塩梅だった。

 

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しかし有り難いことに

そのおかげで

給料日直前のこの一週間

犬を連日、病院に連れていくこともできたわけだ。

 

「今日は注射2本に云々で3500円」

「今日は注射2本に1週間分のお薬で8700円」

 

「わーーー

段々お金が無くなっていくぅうう」

以前、病院の受付で叫んでいた青年を見たことがあったが

まさしくそれが

わたしの心の叫びでもあった。

 

犬も私も助けられたわけだ。

 

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「吟醸掌篇 Vol.1」の見本が

昨日届いた。

 

夕べ夢中で読んだ。

一度小説を読み始めると止まらない。

コラムに紹介されている書籍のいくつかを

早速チェックした。

 

 

猫が作家然としてちゃぶ台を文机に

座っている。

 

短編アンソロジー。

こちらは5月9日創刊。

 

現在は先行予約の受付も開始されたとのことです。

 

□詳細は→けいこう舎HPより