その人が居た場所

義理の父は

静かな人だった。

 

よく居間で

小さな椅子に腰掛けて

最期の方は居眠りすることが多くなっていた。

 

元々口数も少なく

自分から語ることよりも

周囲の話すのを聞いて

静かに笑っている人だった。

 

今日は四十九日の法要で

家族だけが集まり

線香がたかれた。

 

お勝手に立つと

居間の方から家族の会話する声が聴こえる。

 

なんとなく話の輪のちょっと外側に

まだ父がいて

笑っている気配がした。

 

残された者は

それぞれが

その気配を感じつつも

少しずつ

その人の不在を

受け容れていく。