箱に入ったまま街を移動する男の話があった。
これを実際作って入った知り合いがいた。
その知り合いに
出演者もその人自身で
バックに流れる音も
その人自身のサックスソロで埋められ
そうして地下室で
奇妙に身体を動かしている画像を見せられた記憶がある。
あれはもがいていたのだろうか
踊っていたのだろうか。
もがいている踊りだったかもしれない。
箱の中というのは
外からは何も見えないものだ。
…「作家か何かの部屋のようだった」
誰ともなく囁かれている部屋があった。
本で埋め尽くされていると聞いたときから
その部屋中に積み上げられ
あるいはとっちらかっている本というモノを
勝手に想像した。
そこに入る日
わたしは若干期待をし
箱の中に入る。
目をひいたのは
数年前の無料配布の求人冊子だ。
それが束になって積まれていた。
数年を経た求人冊子は
その人にとって
どういう意味を持っていたのだろう。
「意味があることだってあるでしょう」
ムーミンママならきっとそう答える。