サクラサクキノシタデ

高畑さんっと呼んでいたら

若畑さんだったり

石川さんっと呼んでいたら

「林田です」といわれたりする。

一文字も合致していない。

何故だろう。

 

 

手巻きイラスト!と驚いたら

手描きの見間違いでがっかりして

むしろ手巻きの方が見てみたいと考える。

手巻きイラストって何だ。

 

そんな日々。

 

同じような道をぼんやり歩いていると

曲がるべき角を間違えて

グルグルしたりするが

大きな桜の樹がある家があって

一時期はそれを目印にして帰った。

 

桜の花が散る季節や

葉が落ちる季節には

そこの家のおじいさんが掃き掃除をしているのを見かけた。

夏の暑い日には肌脱ぎになっているのを見かけたこともある。

 

先日そこに警察官と他にも数人がやってきていて

それからその家の雨戸は

いつの日も締め切りになった。

おじいさんは一人暮らしだったのかもしれない。

 

 

ほぼ毎日通る人んちの庭に

梅が開いた。

もうすぐ桜も咲くでしょう。

おじいさんの家の桜も

同じように開くのだろう。

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

「そして、その花びらを掻き分けようとした彼の手も彼の身体も延した時にはもはや消えていました。

 あとに花びらと、冷めたい虚空がはりつめているばかりでした。」

 

坂口安吾「桜の森の満開の下」より